年末調整の手順

年末調整は、企業がその年に支給した給与や賞与に対して、所得税を正確に計算し、従業員に過不足なく課税するために行う手続きです。毎月の給与から天引きされる源泉所得税は仮の金額であるため、年末調整を行うことで、最終的な正しい所得税額が確定されます。これにより、従業員は確定申告を行う必要がなくなり、税金の過不足が調整されます。

1.12月の年末調整の対象者確認

年末調整は基本的に給与所得者全員が対象ですが、次のような場合は対象外となります:

  • 年間給与が2,000万円を超える人
  • 複数の会社から給与を受けている人(メインの職場でのみ調整を行う)
  • 災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税および復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人
  • 非居住者(国内に住所や1年以上居所を持っていない人)
  • 日雇労働者など継続した雇用ではない人

    参考:No.2665 年末調整の対象となる人|国税庁 (nta.go.jp)

2.必要な書類の収集

従業員から以下の書類を収集します。

  • 扶養控除等(異動)申告書:扶養家族に関する情報を申告するための書類
  • 基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書兼所得金額調整控除申告書:基礎控除、配偶者(特別)控除、定額減税及び所得金額調整控除を受けるための書類
  • 保険料控除申告書:生命保険、地震保険などの控除を受けるための書類
  • 住宅借入金等特別控除申告書:住宅ローン控除を受けるための書類

    参考:各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)|国税庁 (nta.go.jp)

3.控除額の確認と計算

年末調整時に計算する所得控除
上記書類の内容をもとに、次の所得控除を計算します。

所得控除の種類内容
基礎控除すべての納税者に適用される控除。合計所得金額によって控除額が変動し、0円~48万円が控除される。
配偶者控除納税者に扶養される配偶者がいる場合に適用される控除。控除を受ける納税者本人の合計所得金額、および控除対象配偶者の年齢で控除額が決まる。
配偶者特別控除本人の合計所得金額が1,000万円以下で、かつ配偶者(生計が一など他に要件あり)の合計所得金額が48万円超133万円以下の場合に適用される。控除額は、本人および配偶者の合計所得金額に応じて変わる。
扶養控除税法上の控除対象扶養親族がいる場合に適用されます。扶養親族の年齢や同居の有無などに応じて38万~63万円が控除される。
障害者控除本人や、生計を一にする配偶者または扶養親族が、税法上の障害者に該当する場合に適用される。控除額は区分により27万~75万円
寡婦控除夫と離婚または死別した女性が所定の要件に該当する場合、27万円が控除される
ひとり親控除離婚、死別、未婚など独身で子どもを育てている人が、所定の要件に該当する場合、35万円が控除される
勤労学生控除本人が税法上の勤労学生に該当する場合、27万円が控除される
生命保険料控除生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に受けられる控除。控除額は、支払った保険料等の金額や、新契約か旧契約かなどによって異なり、合計で12万円が上限となる
地震保険料控除地震保険にかかる保険料または掛金を支払った場合に受けられる控除。控除額は支払保険料の金額によって変わり、最高5万円
社会保険料控除納税者が自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合、その支払った全額が控除される
小規模企業共済等掛金控除小規模企業共済、iDeCo(個人型確定拠出年金)、心身障害者扶養共済制度の掛金を支払った場合、掛金の全額が控除される

参考:タックスアンサー(確定申告_所得控除)|国税庁 (nta.go.jp)
   令和6年分年末調整のしかた(手順などの説明)|国税庁 (nta.go.jp)

年末調整時に計算する税額控除
上記書類の内容をもとに、次の税額控除を計算します。

税額控除の種類内容
住宅ローン控除住宅ローンを利用して住宅を購入または改修した場合に、所得税や住民税から一定額が控除される。
定額減税(年調減税)所得税については本人3万円、同一生計配偶者3万円、扶養親族1人あたり3万円が減税される(個人住民税については、本人1万円、控除対象配偶者1万円、扶養親族1人あたり1万円が減税)

参考:定額減税 特設サイト|国税庁 (nta.go.jp)

4.所得税の再計算&給与明細への反映

年末調整では、給与総額と控除額をもとにその年の最終的な課税所得を計算し、所得税を再計算します。従業員の毎月の源泉徴収税額と比べ、過不足があれば給与支給時に精算されます。

5.年末調整のスケジュール

  • 10月~11月: 従業員から必要な書類を集める。
  • 12月: 通常12月に年末調整を行い、過不足があれば調整する。
    (法律上、年末調整の最終期限は1月31日となっているため、1月での調整も可能ですが、これは年末調整の記入漏れや訂正による再年末調整のための期限と考えた方がよいです。)